気分はいつでもアウトドア

インドア派サラリーマン妄想記

『寒いから寝袋で寝ようかな』っという妄想

今日は、今では珍しい寝袋を紹介しようと思う。「Rab Quantum Top Bag」だ。素晴らしいコンセプトで作られた寝袋だけど、もう廃盤となってしまったので、入手は困難(っというか無理!)だろう。

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コンプレッションを解いた直後なので、ちょっとショボショボしているけど、まだまだ現役だ。メーカーの公称値では0℃対応となっているけど、僕はこの寝袋を通年で使っている。冬の氷点下でも、夏の暑い日でもこれ1本持っていれば問題ない。気温が氷点下ならば一緒に写っているダウンのインナージャケットとパンツを着て暖かく眠れるし、暑ければお腹の上にふわっとかけるだけだ。

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写真では分かりづらいけど、この寝袋のダウンは上面と足先だけに配置されている。つまり、背面は薄い布一枚だけだ。それに頭部もないので、寒い冬場は帽子を被って寝ることになる(人間の体温は頭部の毛穴から最も多く失われるのだ)。極端な造りだと思うかもしれないけど、設計思想を知れば、理にかなった寝袋だと思うはず。

そもそもダウンが温かいのは、空気の層を形成するからだ。だから、ダウンの性能は膨らみ具合を表すFP(フィルパワー)で示される。FPの高いダウンはそれだけ多く膨らんで、空気の層を作ってくれる。しかし、せっかくFPの高いダウンを使っていても、寝袋の背中のダウンは体重で押しつぶされてしまい、FPに見合った保温効果は期待できない。それなら、「どうせ背中はマットで断熱するから、不要な背面のダウンを取っ払って、重量を軽くした方がいい」、っという思想で作られたのがTop Bagだ。その後、「もう背面の布すらいらないよ」っという発想に進み、背面はゴム紐だけのキルトが出回ることになる。

余談だけど、、、FPではなく「XXXフェザーYY%」とか、さっぱり性能の分からん表示がしてあるダウンジャケットとか買っちゃダメだ。FP400程度の粗悪品かもしれない。どうせ買うならFP750以上がいいと思う。

薀蓄をもう1つ。Ultralight Hikingの教えによれば、装備を軽くするには、Multi-functionが重要だそうだ。ここでいうMulti-functionとは、1つの道具が2つ以上の機能性を発揮することをいう。たとえば、トレッキングポールをテントポールとして使えば、テントポールの重量分、装備を軽くすることができる。これも立派なMulti-functionだ。

それに比べると、寝袋は夜寝るためだけの道具で、昼間歩いている間は役に立たず、むしろ単なるウェイトになってしまう(心の師匠、Ray Jardine大先生のRay-wayでは寒い時のジャケット代りに寝袋を羽織るけど、、、ちょっと真似できないしね!)。もしUltralightな装備にしようと思ったら、単機能しか持たない寝袋はできるだけ重量を減らすべきだ。昔々、Ultralight HikingにハマってJohn Muir Trailに通っていた当時の僕は、試行錯誤の末、寝袋の一部を防寒用の衣服に置き換える方法を思いついた(偉そうに言うほどのことでもないが)。それを実現してくれたのが、Top Bagだった。最低限の保温機能を残してダウンをそぎ落としたTop Bagを使い、足らない保温機能は防寒着のダウンジャケット&パンツと帽子で賄う。僕にとってのダウンジャケット&パンツは、気温が低い時の防寒着と、寝袋の機能を持つMulti-functionな道具なのだ。

それにこのやり方は、気温差が激しい場合にも、柔軟な対応が取れるので使い勝手が良い。たとえば、標高4000m級の山々を縫うように歩くJohn Muir Trailでは、暑い谷底と、氷点下の峠を繰り返し歩く。谷底で暑くて寝苦しい夜を過ごした翌日は、氷と雪だらけの峠近くで凍える夜を過ごす、なんてことも普通だ。Top Bagとダウンジャケットの組み合わせなら、そのどちらでも快適に過ごせる。実に頭のいいやり方だ。

 

もし冬用の寝袋を購入しようと考えているなら、こんなやり方もあるのだと、頭の片隅にでも覚えておいてくれるとうれしい。アウトドアショップの店員はやたらとダウンが詰まった高価な寝袋(-XX℃対応とか)を勧めてくれるけど、、、そんなの信じちゃダメ! 店の売上重視のセールストークだよ! ぶっちゃけ、春秋向けの軽いダウンの寝袋とダウンジャケット&パンツがあれば、氷点下でもだいたいOKなのさ!